最近、ChatGPTが大きな話題となっています。弁護士業界も例外ではなく、ChatGPTが法律相談や書面作成など、弁護士業務の大部分が代替可能となり、弁護士はもはや用済みになるのではないか、というような意見すらあります。
確かに契約書のチェックや判例検索・分析などはAIの得意とするところであり、もはや人間のかなうところではないかもしれません。
ただ、少なくとも私のような町弁(市民一般の案件を扱う弁護士)にとっては、しばらくはChatGPTに駆逐されることはないかな、と感じています。
理由としては、まずはChatGPTはいわゆる集合知であり、ネット上に散在する知識・情報を集めて分析するもののようです。ネット上の情報は、裁判所が公表するような精度の高いものから、質問サイトの回答のような、やや正確性に不安のあるものまでその信頼性は様々です。ChatGPTにいわゆる「常識」はありませんから、そのあたりを選り分けて常識に適う結論に導くことはまだ苦手なのではないでしょうか。アメリカだったか、弁護士がChatGPTに書面を書かせたら、架空の裁判例を引用して論じてしまった、というものがありました。ドラフト的にChatGPTに文章を書かせることはありだとしても、現時点では最終的にはやはり人間たる弁護士のチェックを要するのではないでしょうか。
また、我々弁護士の業務は、法律相談に回答するだけでは終わらず、案件を引き受けて解決に導くのが本来の仕事です。従って、例えば「夫の浮気で離婚したい」、「借金が膨らんで返済が難しい」というような相談に対して、ChatGPTが「あなたは自己破産すべきです」、「夫の浮気は民法770条1項1号の不貞行為に該当し、離婚事由ですので離婚できます」などと回答しただけでは何の解決にもならず、それぞれ自己破産手続きや離婚の調停なり裁判なりに進まなくてはなりません。今のところChatGPTが案件を手掛けて具体的な手続きに進む、ということまではできませんので、そのあたり、まだ弁護士が手掛ける必要があります。
ただ、まだ大丈夫などと余裕をかましている間に、この手の技術の進歩は日進月歩ですので、あっという間にChatGPTが精度を上げていろんなことができるようになるかもしれません。例えば自己破産などは、相談→破産申立書作成・書類収集→裁判所へ申立、くらいのことはできるようになる気がします。我々も気を引き締めて情報をアップデートして、AIにできないこと、人間にしかできないことは何か模索していく必要があります。
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