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耳から摂るエナジー・ドリンク

mhojo58

 インドのアクション映画「RRR」のレビューに「眼から摂取するエナジー・ドリンク」というものがありました。観ると元気になるということでしょう。うまいことを言うものです。それでは「耳から摂るエナジー・ドリンク」は何でしょうか。誰もが好きな音楽、好きな曲があり、聴くと元気が出るものがあるかと思います。私はロックやジャズを主に聴くので、そちらで元気の出る名盤などはたくさんありますが、今回はクラシックの中から写真の2枚を紹介します。

 2枚ともベートーベンです。突拍子もないことを言うようですが、私はベートーベンに「ロック」を感じます。基本的に反体制で反骨の人です。王族の馬車が通り過ぎても挨拶せず知らんぷりいていたという逸話があります。偏屈な人で、何度も引っ越しをしたり、借家なのに「眺めがよくなるから」と言って壁に穴をあけたりしたそうです。その生き方が「ロック」です。そういえばあの肖像画のモジャモジャ頭もパンクロッカーに居そうです。その音楽にも、他の作曲家にない「圧」を感じます。「俺の音楽を聴け!」という強い意志、気合、暑苦しさを感じます。こういうのもロックです。

 左側はピアノがアルトゥール・ルービンシュタイン、指揮がダニエル・バレンボイム、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団のピアノ協奏曲第5番「皇帝」です。録音が1975年、当時88歳の往年の巨匠ルービンシュタインと、若き日の現代の巨匠バレンボイムががっぷり四つに組んだ名盤です。高齢のルービンシュタインに指の衰えは全く感じません。堂々として王者の風格があります。バレンボイムの指揮する管弦楽団の演奏も新芽がグングンと伸びていくような溌剌とした勢いがあります。

 第1楽章のイントロからもうクライマックスです。最初に和音がバーンと出た後、ピアノが全速力で音階を駆け上がります。華麗なピアノソロの後、楽団が音の塊となってテーマメロディーを奏でます。その後はピアノと管弦楽団の丁々発止のやりとり、老獪なレスラーと新人格闘家との闘い、といったところでしょうか。いつ聴いても心躍る名演奏です。

 右はカルロス・クライバー指揮、バイエルン国立管弦楽団の交響曲第7番で、1982年の演奏です。日本では「ベト7」との愛称で、近年では「のだめカンタービレ」のオープニングで使われるなどして人気がある曲です。

  このクライバーの演奏は、リミッターが外れたダンプカーのように勢い良く飛ばしていることで有名です。特に第4楽章。リズムは2拍目にアクセントがあり、これはロックでいうとドラムがスネアを叩くところで、ロックのリズムと同じなのです。また執拗に繰り返すテーマはハードロックやヘビーメタルでのギターリフを思い起こさせます。そしてこの疾走感、完全にロックしているのです。途中フルートが出だしをとちっているらしいのですが、ライブでは少しのミスは許容範囲、音楽は勢いと私は考えているので全然気になりません。このクライバー盤の第4楽章は他の指揮者のものより大体1分は早いそうで、クライバー自身も「やりすぎたかな…」と思ったらしく、生前は発表されませんでした。とにかく手に汗を握る演奏で、聴くとスカッとします。

 ベートーベンの音楽は猪木の闘魂注入ビンタと同じ、気合を入れるために聴くものです。私も聴きなおして、気合を入れなおして仕事をしたいと思います。


 

 

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