「私は裁判で負けたことがない」と無敗を誇る弁護士がいるそうです(私はお目にかかったことがありませんが)。物凄い凄腕なのかもしれませんが、私としては、達成にはさほど難しいことではないと思います。つまりは、「100パーセント勝てる」と踏んだ事件だけ受任すればよいからです。しかし、そうなると、そのような事件だけ厳選して受任しても事務所経営が回ることが前提となり、私には到底真似できません。そうなると、結局は難しいのかもしれませんね…。
事件の依頼を受けた際、弁護士は依頼者のお話しや持参した資料などから、頭の中で勝率を粗々はじき出します。例えば貸金の請求で、借用書もお金を渡した際の領収書もある、お金の貸し借り自体には争いがない、というような場合、貸金請求の裁判を起こした場合はほぼ勝てるのではないでしょうか(もちろん、そのあとの回収可能性という問題がありますが)。一方で、お金を貸したけれど借用書は取っていない、現金をそのまま渡しただけで特に何も資料がない、今となっては借主もお金の貸し借り自体がなかったと争っている、というような案件はなかなか苦戦するでしょう。弁護士は依頼者から話を聞きながら、資料を見ながら、「これは7:3で勝てるかな」とか「これは五分五分だな」とか、頭の中で勝率をはじきだしています。
この勝率との兼ね合いで、弁護士が事件を引き受けるかどうか判断するのですが、どのくらいの勝率なら引き受けるかということは弁護士によるでしょう。上記のような弁護士はほぼ勝ちが見込める事件しか引き受けないでしょうし、五分五分くらいだったら受けるという弁護士もいるでしょう。さすがに100パーセント負けという案件を受ける弁護士はいないでしょうが、少しでも可能性があれば引き受ける、という方もおられるでしょう。
私は、依頼者のお話を聞いて、勝ちとまでは言えなくてもある程度ソフトランディングの可能性があれば受けることが多いです。例えばとことん争って判決に至れば敗訴する可能性が高くても、和解で適当な線で落ち着けそうな案件などです。ただ、やっぱりソフトランディングできなくて負けるということもあります。勝ち負けも大切ですが、その前に、依頼者の方々にとって、何が一番よい解決策かを考えて実行する方が大切かな、とも考えています。
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