相続や離婚等、家族関係の事件を手掛けるときは、かならず戸籍を取り寄せることになります。個人情報、プライバシーの最たるものである他人の戸籍を大量に見ているのが弁護士です。
戸籍は明治初年から作成されていますが、現在取り寄せることができるのは明治19年式の戸籍、通称壬申戸籍からとなります。これ以前の戸籍もあったようですが、身分や病歴、犯罪歴なども記載していたようで、人権上の問題ありとのことで、現在は公的には残っていないことになっています。
明治19年頃の戸籍でも、当時の人は江戸時代生まれ、生年月日の欄には「安政」、「文久」、「天保」などと江戸末期の元号が見られます。現在の高齢者の祖父母くらいは江戸時代生まれで、江戸時代が身近に感じたりします。この時期の戸籍にはたまに記載欄に不自然な空白があるものがあります。これは「平民」や「士族」といった身分が記されていたのを消去したものです。
明治時代の戸籍は筆書きで、達筆過ぎて読めなかったり、異字というのでしょうか「この漢字、こんなところにテンが付いているものもあるのか…」みたいな,見たことがない漢字が出てきます。そのあたりは今よりフリーだったのでしょうか。
昔の戸籍を見ると気づくことは、まず昔の人は子だくさんだったこと。だいたい20歳前後で結婚して6,7人の子供は当たり前、10人くらいまでは普通に見かけます。今や子供1,2名でも育児は大変ですが、昔の人はどうしていたのでしょうか。今や想像できませんね。また乳幼児で亡くなっている方も多いこと。あと、子供が生まれる直前や直後に結婚している方もかなりおられます。授かり婚みたいなものや、正式な結婚までのお試し期間のようなものもあったのでしょうか。昔の方がおおらかだったのかもしれません。
名前の変遷も興味深いです。明治時代には「〇〇兵衛」とか「〇〇左衛門」みたいな江戸時代の名残のような方もいます。明治から大正期の女性で多いのはカタカナ2文字の名前で、「ヤス」、「トメ」、「ヨシ」のような名前が散見されます。長い昭和期は男性の名前は「〇男」、「〇雄」、「〇吉」、「〇介」などが多く、女性は概ね「〇〇子」です。平成期に入ると「〇〇子」などは激減し、フリガナがついていないと読めない名前が現れてきます。ちなみに戸籍にフリガナはついていないので、読み方は別の方法で確認しなくてはなりません。
相続事件で戸籍を取り寄せて相続関係図などを作っていると、どの家族にも色々な物語があるのだな、と思います。まさに「人に歴史あり」です。
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