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mhojo58

勝ち・負け

「弁護士さん、この私の案件、勝てますか?」とか、「弁護士さん、この案件、勝率としてはどのくらいですか?五分五分、それより私の方が有利ですか?」というような質問は依頼者の方からよく受けます。依頼者としては自分の主張・要求が認められるかどうがが一番重大なので、当然の質問だと思います。

 しかし、弁護士の内心としては「プロとして結果は予測して依頼者に説明しなければならない」と考える一方、「結論は結局、分からない」という思いで揺れ動いています。

 まず、弁護士は「これは絶対勝てる、私が100パーセント保証します!」というような物言いはしてはいけないことになっています。弁護士職務基本規定第29条第2項に「弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け負い、又は保証してはならない」と定められています。

 また、例えば裁判ですと、判決を出すのは弁護士ではなく裁判官ですので、そのジャッジがどうなるか、弁護士の方で予想はできても確実に判断できるわけではありません。さらに交渉中や裁判中に思いもよらぬ出来事があり結論が変わってしまったり、依頼者の方が大して重要ではないと考えて弁護士に伝えていなかった事実が、実は結論を左右する重大な事実で、それが途中で判明したことにより予想が外れてしまった、ということもあります。さらいには裁判中に裁判官が交代することがあり、それで事件の風向きがかわることもあります。

 そもそも、「勝ち」とか「負け」というものがどういうものかも厳密に定義付けできるものではありません。貸金の裁判であれば、貸したお金の全額について勝訴判決が出れば一応勝ちとは言えそうですが、判決が出ても相手方にお金がなく結局1円も回収できない場合もあります。まあ、これは依頼者の目的が全く達成できていないので、結論としては「負け」なのかもしれません。また離婚であれば離婚のほか財産分与、子供の親権、養育費、慰謝料等々の論点・争点が多く、どこを勝ち取ったら「勝ち」なのか、依頼者と弁護士の認識が相違することもあります。

 裁判官も一部の方は期間限定で一定期間だけ弁護士をやることがあり、そのような方が弁護士としての経験を語ったエッセイで「弁護士は霧の中で戦っている」とおっしゃっていたことがありました。結論が見通せない中での事件遂行のことをおっしゃった、まさに言いえて妙な発言だと思いました。

 結論は確実には見えない、しかしながら依頼者のためにより良い結果を目指して全力を尽くす(もちろん公正なやり方で)、というのが弁護士のあり方なのでしょうね。

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