引き続き、イーロン・マスクさんの話題です。
マスクさんはリモートワークに否定的なことで知られ、自身が創業したテスラ社も今年5月以降はリモートワークを原則禁止し、今回買収したツイッター社も同様に原則禁止にするようです。
日本の状況をみると、リモートワークは、物理的にできない職種は除いて、オフィスワーク主体の職場ではかなりの割合で定着したように見えます。私も法律関連の業者さんとのお付き合いは、商談・打ち合わせはZOOMなどのウェブ会議システム、書類のやりとりはメール添付か、少し分量があるものはクラウドに上げてやりとりすることが普通になりました。もはやリアルで会った人の方が少ないくらいです。その他、各種会議もズームがデフォルトのような感じになってきて、たまにリアルで参加すると「何かあったんですか?ZOOMでも参加できるのに…」と驚かれるほどになりました。
マスクさんの上記の方針には、やはり「昭和の経営者か!」と批判的な声が多いようです。確かに通勤時間のカットという点や、遠方に住んでいたり、育児や介護、何らかの障害といった色々な事情で出社できない方も仕事ができるようになるので、多様な人材を活用するという点においてリモートワークはメリットが多いと考えられます。一律禁止はやりすぎのような気がします。
しかし、当然ながらリモートワークも万能ではないので、デメリットもあるようです。
弁護士目線でいうと、労務管理、特に勤務時間の管理が難しいのではないかと考えています。今までは、オフィスに出社していれば、とりあえず会社の労務に服している勤務時間といえました。しかしリモートワークは原則自宅にいるので、勤務時間があいまいになります。パソコンを立ち上げてから電源オフにするまでの時間、あるいは会社のサーバなどに接続している時間が勤務時間といえるか、というと、それも難しいような気がします。パソコンを立ち上げながら一休みしたり、昼寝することもあるでしょう。ウェブ会議でマイク・ビデオともにオフにしてパソコンの前で内職、あるいはパソコンの前にすらいないで別のことをしているのはけっこうあることです。勤務時間に応じて給与を支払う、という制度自体、これからは立ちいかなくなるかもしれません。
かといって、成果主義といっても、何をもって成果というのか、基準が立てにくいとも考えられます。入力したデータ・文書の分量だけで計るのであれば簡単ですが、そういった単純な問題でもないでしょう。
労働者目線でいうと、オン・オフが曖昧になるとか、コミュニケーションが不足してチームワークに支障を来すということもあると聞いています。確かに、上司が部下に仕事の指示を出すとして、リアルな職場だと実際に向き合って「これ、お願いします。大変だけど頑張ってね」という感じで伝えると穏やかな感じですが、「以上のタスクを〇月〇日〇時までに完了させてください。お願いします」みたいなメールだけだと、ニュアンスが伝わらずに冷たい感じがしますね。
現在、リモートワーク主体で運営している会社がどのように労務管理、特に勤務時間の管理をしているのかは詳しく知りません。とりえあず今までどおり働いたことにして支払っているのではないかと推測するのですが、これから上記のような問題が顕在化するかもしれません。
マスクさんの考えを勝手に推し量ると、上記のような労務管理の問題、下品な言い方をすると「お前らPCの前でサボってんじゃねえよ!」という考えもあるかもしれませんし、真にイノベイティブな製品ないしサービスはリモートワークからは生じえない、と考えているのかもしれません。現場に出て、リアルな場面で、喧々諤々の議論、その上で試作、その試作品を手に取って、使ってみてさらに議論、みたいなものを求めているのかもしれません。確かにリモートワーク、ウェブ会議では何となく皆が受け身になり、今までの業務の維持継続はできても、それを超えた新しい何かは生み出されないような感はあります。IT企業の中でもリアル勤務回帰のような流れはあるそうなので、そのあたりを意識しているのかもしれません。
とは言っても、やはりリモートワーク原則禁止はやりすぎでしょうね。ありきたりな言い方になりますが、リアルとリモートをバランスよく織り交ぜたハイブリッド型の働き方が一番よいと思います。
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