
ロックというと、血沸き肉躍る、または騒々しい音楽というイメージがありますが、中にはその対極にあるようなロックもあります。それが、このグレイトフル・デッドの"Live/Dead",1969年のライブアルバムです。グレイトフルデッドは60年代から90年代にかけて活躍したサンフランシスコ出身のバンドで、「デッドヘッズ」という熱烈なファン集団がいて、ツアーもファンが集団で追っかけることでも知られています。「デッドベア」という、クマのマスコットキャラクターは日本でも結構見かけます。
彼らは基本的にカントリーやブルーグラス、ブルースといったアメリカンルーツミュージックに根差した渋い音楽なのですが、このアルバムではまさに「サイケデリック」とも言うべき幻想的な演奏を繰り広げています。特に1曲目の "Dark Star"は23分にも及ぶ白眉の演奏です。ジェリー・ガルシアのリードギターは星空を漂うような浮遊感溢れるフレーズを次から次へと繰り出し、ボブ・ウィアーのリズムギターもリズムを刻むというよりガルシアのギターに合いの手を入れているようなもので、フワフワと虚空を漂うようです。ベースやドラムも、ロックならタイトなビートを刻むところ、ギターに合わせて自由自在に音の空間を漂っています。夜に眼をつぶって聴いているとまさに暗い宇宙空間に放り出されたような感覚を味わえます。もう50年以上の前の演奏ですが、他に似た音楽がないゆえにいつまでも古くなりません。
気持ちを落ち着けたいようなときに聴きたくなるアルバムです。
Kommentare